序文 死生観①
これは、"音楽をやるひと"としてではなく、
肩書きも役割もない、ただの人としての興味の話です。
僕はひとの生き死にに興味があります。
それは誰もが経験するのに誰もが経験したことがないことで、未知が詰まっているからです。
遅かれ早かれ、いずれ僕は死にます。
それまでに僕は、幾度かひとの死に出合うでしょう。
死ぬとき、僕がどうなるのか、
死ぬとき、そのひとがどうなるのか、
生き残されるひとがどうなるのか、
そういうことに興味があります。
僕は、いつか死ぬことを考えるとき、だいたい2回に1回の頻度で強い恐怖を感じます。
それ以上思考することを妨げるような、肉体的衝動、手が強く震えたり、意図してないのに急に立ち上がったり、大きな声が出たり、そういうことが起きます。
そんなわけで、「地球上から僕が居なくなること」、その表面より先を考えられたことがありません。
……ひょっとしたら、その先の深淵は覗き込まない方がいいのかもしれませんが、
それでも僕は知りたいと思うのです。死、ということを。
ただ、死は、少なくとも僕の周りではあまりおおっぴらに語られません。
それが日本人特有のことなのか人類共通のことなのかは分かりませんが、
誰かが忌避しているのは確かでしょう。
また、今の僕では死について議論することは難しいでしょう。
ただでさえ少しでも考えようとすると逃げてしまうのだから。
議論できないのなら、
過去生きたひとたちがどう思っていたのか、
今生きているひとたちがどう思っているのか、
そういう「記述」に当たって、
考えてみようと思いました。
というわけで、
死が書かれている本や漫画、音楽に出会ったら、
その記述とともに、死について考えていきたいと思います。
【死について考えるラインナップ(順不同、随時追加)】
・『イワン・イリッチの死』 レフ・トルストイ
・『死ぬ瞬間』 エリザベス・キューブラー=ロス
・『現代の死に方』 シェイマス・オウマハニー
・『死後』 正岡子規
・『死とどう向き合うか』 アルフォンス・デーケン
・『死への準備教育のための120冊』 アルフォンス・デーケン